風の盆

恋文 こころ

2012年09月08日 15:21




二百十日の初秋の風が吹く頃
月明かりの中を 
行灯のほの明るい灯りの中を
静かに踊り流す

「おわら風の盆」は毎年9月1日から3日間、越中おわら節の哀調を帯びた旋律に合わせて、
坂の多い町中を町衆が無言のまま踊り続けるという独特の祭りです。

かつては、ほとんど近隣の人たちしか知らないローカルな祭りで、
見物人も大して多くなかったといいます。
 深夜家の中にいると、闇の中から胡弓・三味線・太鼓の音が次第に近づいてきて、
人びとの踊る足音とともに家の前を通り過ぎ、
次第に遠ざかってゆくという、
幽艶な情趣に満ちた行事だったそうです。

私が風の盆を知った頃は、もうすでに
全国から、この時のために宿の予約などをして
数日前から滞在する人もいるというほどの人気のある行事となっていました。
人口2万人ほどの山間の町が、3日間で30万人前後の観光客が訪れるようになっているともききました。

数年前 はじめて訪れたとき
行灯の灯りで、ほの明るくなった坂道を 静かに静かに踊り進むその様子
目深にかぶった編み笠から 見え隠れする首筋、
すっとのびた、しなやかな指先と やわらかい物腰、女らしい所作。
男性でなくても 惚れてしまいそうな、そんな妖しくて優美な踊りに
ぞくぞく感じたのを覚えています。


あの角を曲がると 出会えるかもと
夢中で町の中を歩く



夜も深くなると 
夢の中を歩いているような、
すこし悪い事をしてるような
そして、それが嬉しいような

そんな懐かしいような、どきどきするような空間に
また行けるといいなと思う九月です。
季節のはなし